作り手を訪ねる事で・・・
福祉事業所の訪問をしながらも記事にするタイミングを逃してみなさんにまだご紹介出来ていないままになっている所というのが結構あります。
それらもこれから折を見てご紹介していきたいと思いますが、今回はそのうちのひとつ、マジェルカと同じ武蔵野市内にある社会福祉法人武蔵野さんという、市内でも大きな法人が運営する「デイセンターふれあい」という生活介護の事業所さん、訪問してから時間が経ってしまっていますが、そちらのお話を。
マジェルカが商品のお取引などでふだんお付き合いしているのは、就労継続支援事業所。
その中でもB型と呼ばれる種類の施設になります。 それらに比べると「デイセンターふれあい」さんがやっている生活介護事業所というタイプの施設は、比較的重度の障害者の生活を支援する種類の場とされています。
どちらもあくまで制度上での名称ですが、“就労継続支援事業所”はその名の通り就労の支援の場という事になっているのに対し、“生活介護事業所”の方は就労=お仕事する支援というよりは、日常生活のサポートの支援に重きを置いている場、ということになっています。
ですから、たとえモノ作りを行っていてもその商品のクオリティや生産性をあげるという事や、それらを販売して工賃(お給料)を稼ぐ事を目指すのを、就労支援事業所ほどそこの目的としては求められていないので、商売っ気のあるマジェルカとの関わりは比較的少ないタイプの事業所ではあります。
そんな生活介護事業所の「デイセンターふれあい」さんの商品を今マジェルカでは扱わせて頂いています。
その一つがこちら。
ペイントしたスニーカーたち。
そしてこれらのスニーカー、マジェルカでもお客様には結構評判良いのです。
同じ市内で活動している事業所さんでもあり、せっかくなら積極的に繋がっておこうと考えました。
それはそれとして、自分たちが何を扱っているのか、その理解のためには、作り手や現場を知っておきたいという考えから、そもそも売るためには、それら商品の制作現場は可能な限り見ておきたいのがマジェルカなのですが、それでも今回、特にふれあいさんに訪問してみたかったのは他にも理由もありました。
まず、こちらの事業所さんとつながるきっかけですが、ここのスタッフさんがマジェルカを訪ねてくれ、これらの商品を紹介して下さったのがはじめでした。
今となっては「マジェルカでも評判良いです♪」なんていってますが、実を言うと最初はこちらの商品の取り扱いに対して積極的ではありませんでした。
私の方が。
その商品は可愛くて、今のマジェルカの売り場に同じようなモノは無いし、売り場でも映えそう。
モノとしてはマジェルカの売り場にあったら面白いかも・・・とは思いました。
それでも積極的に扱う気持ちにはなりませんでした。
何故かというと、このモノづくりに重度の身体障害のメンバーさんがどれだけ関われているのかと疑問を持ち、実際にどうやって作られているかを聞くと、やはり想像した通り、自分たちでは手足が動かせないメンバーさんの横でスタッフさんが手を添えて動かして作っているという様子。
もちろんそういう作業や支援の仕方自体が良い悪いという話でも、ましてやそれを私が言う立場ではないのですが、マジェルカとして「障害のある方々が作った商品です!」とお客様に自信をもって伝えられないな、と感じた。
実際には店頭でお客様一人一人全ての方に商品がどうやって作られているかを伝えているわけではなく、また逆にどこで誰がどうやって作っているかまで細かく気にする方もお客様の中にそういるわけでもない。
だったら、売れそうな商品で一応でも「障害者が~」と謳えるんだったら別に良いのでは、と考える人もいるかもしれません。
ただ、ウチはこだわりたい。
これまでもマジェルカでは、自分たちが扱う商品に関わっている人や、その現場を出来る限り知るという事を重視してきたつもりです。
それは売る立場として知らないと、また、知った上で自分たち自身がそのモノ作りやそれを売る事の意味を何か見つけられないと売りにくい。
言い換えるとそれらを扱う理由付けが自分たちなりに出来ていないと、ということ。
また、頭での理解だけではなくて気持ちの上でも納得や共感できないと、ということ。
なんだか融通が利かない頭が固い感じしますね。。。
実は私自身、この仕事を始めた当初、障害者施設のモノ作りの現場を知っていく中で、かなりの割合でスタッフが関わっている作業を目にし、それに違和感を感じたのを覚えています。
例えば織物を織るのに、スタッフが織り機に糸を全てセッティングした上で、メンバーはただ繰り返し作業でその機械を動かしているだけ(に見えた)だったり、
例えば陶芸ではメンバーは好きに粘土をこねたり丸めてるだけ(に見えた)で、最終的にはスタッフがほとんど整形したり釉薬をかけたりする事でやっと製品として成り立つ
ということなどなど。
障害者支援の現場のリアルを知らなかった私にとって、障害者が作っていると言うからには、全てか、その多くの工程に障害のあるメンバーが関わっていると思い込んでいたし、独特なユニークな製品もその多くはメンバーのアイデアから生まれているのだと思っていたり。
今となってはそうでもないとわかるのですが。
アレ?と思った私が率直にその事を伝えた相手から
「私たちはメンバーもスタッフも一緒になってのモノ作りを大切にしています。」
という言葉を受け、「なるほどねー」と理解したり理解できなかったりを繰り返してきた感じ。
そして、そのモノが出来上がってくるまでの背景で、何が大切な核なのかというのは曖昧だと捉え、柔軟に考えるように、そしてなおさらまたじっくり観察して考えるようにもなっていきました。
織り機のセッティングを全てスタッフで行い、メンバーはただバッタンバッタンと機を動かす単純作業、一見それだけの作業に見えても、織る糸の色を選ぶのはメンバー本人であったり、その方なりの力の入れ方やちょっとした遊びが入ったりと、織り方はその人その人で違っていたり。
そして当然それによって出来上がるモノにもそれぞれ違う個性が出てくる。
メンバーが粘土を好き勝手にこねたり丸めたりしているように見えても、そういう作業しか出来ないメンバーの作るモノ、それがあってこその商品だったり作品に仕上がるように、スタッフが様々な工夫や努力をしていたり。
そして、必ずしも個性が云々だとか、感性が独特だからどうだ とかなんて部分が特にみられないような作業だったとしても、きちんと丁寧に繰り返したり、決まったルールに沿って仕事を黙々とこなすというような仕事にも価値はあるのだろうし、そうやって出来上がってきたモノは、他でもない生真面目な彼らの仕事の結果としてはやはり価値はあるのかもしれないと思ったりもするように。
そしてマジェルカではそれらのモノづくりの背景にあるそれらを価値と認められるからこそ商品として扱っているのです。
余談ですが、私が外の立場からそんな事を考えながら多くの福祉事業所さんや支援者の方々を見ていてしょっちゅう感じさせられる事というのがあります。
それは、本人(作り手)たちがあると思っている商品やサービスの価値を、価値として感じとってくれる相手(買い手)もあれば、そうでない相手もあるということや、そもそもどういう相手に届けたいのかということ、それ以前に自分たちが障害のあるメンバーと一緒になって提供しようとしている商品やサービスの価値が一体なんなのか、逆に、考えている他にも価値はないのか・・・というような事を、きちんと理解する事を二の次にして、とりあえずモノ作りをしていたり、したがる人が多いという事。
話をもどして。
「そこに通う障害のあるメンバーが主役といえるモノ作り」
そうやって作られているモノにこだわっている(つもりの)マジェルカなのです。
「実は障害のある方でもこんなモノ作りができる、こんな力がある。」
本当は特別ではない当たり前の事だったりするのですが、その当たり前は狭い福祉業界の中での当たり前ではあっても、昔の私と同じように世の中の多くの人はあまりに多くがそれを知らない。
世の中が知らないというより、福祉の側が世の中に知らせないできたというのがホントのところ。
それをするのがマジェルカなのです。
さて、「デイセンターふれあい」さんの、重度の障害のある人たちの動かない手を、
スタッフさんの意思と力で動かしながら行うモノ作り(のよう)。
それは、「実は障害のある方でもこんなモノ作りができる、こんな力がある。」を伝えるマジェルカが求めるモノとは違う、と言ったはいいけれど本当にそうなのでしょうか?
お仕事作りをするはずの就労継続支援事業所などでも、例えば利用者さんではなくスタッフさんの作家活動かと思えるようなケースも実際にあったりします。
そんな中でモノを作って売ることを無理して頑張る必要が(ある意味)無いともいえる生活介護のふれあいのスタッフさんが苦労や工夫をしながら重い障害を持っている方々を働かせて出来あがったモノを発信するというお仕事作りをする意味ってなんなのでしょう。
この「デイセンターふれあい」さんのモノ作りはマジェルカで紹介出来ないと言いきってしまっていいものなのかな・・・と。
しかもそのモノ自体マジェルカで商品としての価値があると言っているのに。
事実、はじめは何も知らなく始めた自分が、たくさんの現場を見、話を聞く中でマジェルカの商品の価値ってなんなのかという部分が少しずつ変わって(というか増えて)きている。
もしかしたらいつしか固定した見方になってしまっていたり、受け入れるよりも受け入れない理由探しをする方に傾いていたのではないかという自覚もどことなくあったり。。。
だったらいっそこの商品が作られている現場をこの目で見てみて、話を聞いてみて、その結果自分がどう感じるのか、そしてそれをマジェルカとしてどう捉えるか。
それを試してみたい。
そういう気持ちがあっての訪問でもありました。
訪問の様子を、といいながらそれ以前の思いの部分で少々語りすぎました・・・
実際のその様子は
バネ式の特製の治具にスタッフさんが絵の具をつけて
スタッフさんが利用者さんの手を取って治具に添えて
エイッ! ピシャッ‼︎みたいな感じで前に置いてあるシューズやTシャツに絵の具が飛んでいく
という感じ。
こちらは革細工です。
模様を型押しするための刻印棒とごっついハンマーをスタッフさんが特製治具にセット!
あっ!ちょ、ちょっとまだ!まだ離しちゃダメだからね・・・って感じ(かどうか)で
スタッフさんがメンバーさんの手を取りながらハンマーどっかーんっ‼︎
こちらは染めた革の乾燥工程
ドライヤーを手にしているのはスタッフさんです。
メンバーさんが、まるでタイムボカンシリーズにでも出てきそうなデッカいボタンをポチっと
押すとブォーッと温風が出てくるという仕組み。
と、こんな感じです。
みなさんはどう思われましたか?
写っている以外、半分以上のメンバーさんは自分で手を動かして作業が出来る方でしたが、その中に混ざって障害の重い方もこのように関わっているのでした。
別室でスタッフさんとお話した際に「あの方達は自分でどういう作業をしているのか分かったりとか、モノが出来あがったら嬉しい、とか、売れたら嬉しい、とか思ったりしているのでしょうか?」
と聞いてみました。
私の中では「そうですよ」という答えを少し期待していました。
でも、返ってきた答えは「正直わかりません。」という答えでした。
とても誠実で穏やかな方です。
そんな方からのとても誠実な答えでした。
そして「でもきっとそうだと思っています。」とも。
喜んでくれる声や笑顔といった目に見える見返りがないとなかなかモチベーションが上げられない自分が少しだけ恥ずかしくなりました。
やってもやらなくても。。。
だからやらないという人たちもいたりする中で、自分たちで何かを信じながら、自分たちで価値を作り出そうという努力。
それを通じて障害のあるメンバーさんを少しでも世の中と繋げるチャレンジには、クールだのドライだのともっぱら評判の私だって心が動かされます。
それはまた一つのマジェルカに並ぶ商品の価値となり得るというか、価値にしたいと思いました。
ですから商品を扱い、商品だけでは伝わらないその価値をこういう場で発信していきたいと思いいまさらながら書いている次第です。
そうそう時間を作る事は出来ないのですが、制作現場を訪問する事、それ自体が自分たちにとってマジェルカの事業をやる意味を再確認でき、続けていく意思を強めていく事につながっていると実感します。
これからも出来るだけそういう時間を作る努力をしてここでご紹介する機会を増やせればと思います。
そしてマジェルカの商品を手にして下さるお客様が、それぞれにあるその商品の背景を思い描いて楽しんでくれればいいなと思います。
お客様が、そして私たち自身が思い入れの持てる商品、愛おしいと思える商品をこれからも増やしていきたいとも思っています。
~ご案内~
ご要望も頂きながら月イチでの開催がままなっていない「マジェルカcafé」ですが、
今月は4/23(日)に開催いたします。
目的は別になんでも構いません。
参加してようかなという方は お名前とご所属、ご連絡先をinfo@localhost までお願いいたします。
スペースの関係上、人数が多くなった場合にはお断りさせて頂きます。
そこでお願いです。
これまではそんな事が無かったのですが、前回はお申し込みされながらご連絡もないままに来なかった方が3名もありました。
障害者となんかやりたいっていうデザイナーさんや、障害者とモノ作り&ショップをつくりたいので相談にのって欲しいという障害者支援事業やってる団体の人たちでした。。。
参加したいって方を定員でお断りしたにも関わらずだったのでなおさらがっかりしました。
気楽にご参加いただいて結構ですし、事情が出来て参加できなくなるのは仕方ありませんが最低限のルールとマナーは守ってご参加の申込み下さいますようお願いしたいと思いますm(_ _)m