与偶 フルケロイド
kmです。
表題の言葉はご存知ない方にとっては意味がわからないですよね。
作家名とその方の作品写真集名です。
与偶 人形作品写真集 フルケロイド (アトリエサード・2017年)です。
与偶さんは先天的に複数の疾患をお持ちで現在も統合失調症と闘いながら、いわゆる球体関節人形を主に制作されています。私がこの方の存在を知ったのは約10年前でした。人形に自らの血液を塗ったり、服用している薬を人形に埋め込んだりと、強烈な印象を受けました。
素晴らしい人形、素晴らしい人形作家です。
目にした記事によると自らの病は創作に必要なので治らなくてもいい、そして同じ様に苦しんでいる人には自分を踏み台にして上に行ってほしい、といった記述があり、そう言葉にして言いきれるなんて、殉ずる崇高な精神をお持ちのなんてお強い方なんだと感嘆をいたしました。
昨年この写真集の出版に合わせての個展が開催されました。13年ぶりとの事でした。
私が伺った時はちょうど与偶さんが在廊されている時間でお会いすることが出来ました。独自の雰囲気をまとわれていて、お作りになる人形に似ていらっしゃるな、というのが第一印象でした。ご挨拶をすると作品の事を非常に丁寧に説明してくださいました。
初期の作品から最新作まで見ごたえのある個展でした。
この写真集も同様に見ごたえがあります。
日常を軽やかに楽しく飾るような作品や作家も素敵ですが、人間の深淵を覗き込むような作品や作家も同じ位に素敵だと私は思います。
昨今、アールブリュット、アウトサイダーアート、エイブルアート、様々な言葉で障害者の創作に注目を向ける場が多く設けられています。
しかし奈落にいながらも光明を夢見て、自らの人生を美学に捧げ、孤独に戦っている障害を持った闘士と呼べるような芸術家は取り上げられている機会が少ない気がします。
そういう印象を持ってしまうのは私の誤解や勉強不足が原因でしょうか?
いずれにせよ、そういう場でそういう方にこそもう少し脚光が当たってほしい、という思いでご紹介させていただきました。
言葉上の分類を元に作られる状況は現状を包括しきれないのが常なのはわかっているつもりではいるのですが…。